制限行為能力者による行為の相手方を保護するための制度

制限行為能力者による法律行為の相手方(以下、相手方という)は、その法律行為がいつ取り消されるかわからないという不安定な立場におかれます。

そこで、そうした相手方を保護するために認められた制度が以下の4つです。

催告権

相手方は、制限行為能力者、法定代理人、成年後見人、保佐人、補助人に対して、1カ月以上の期間を定めて、その法律行為を追認するか否かの確答を求める催告をすることができます。

制限行為能力者が行為能力を回復している場合

確答があれば、確答した通りとなります。

一方、確答がなければ、その法律行為を追認したものとみなされます(20条1項)。

被保佐人、被補助人が行為能力を回復していない場合

確答があれば、確答した通りとなります。

一方、確答がなければ、その法律行為は取り消されたものとみなされます(民法20条4項)。

ちなみに、行為能力を回復していない未成年者や成年被後見人に対して、催告をすることはできません。

法定代理人、成年被後見人、保佐人、補助人に催告をした場合

確答があれば、確答した通りとなります。

一方、確答がなければ、その法律行為は追認した者とみなされます(20条1項2項)。

取消権の喪失

制限行為能力者が、詐術を用いて法律行為を行った場合は、保護に値しないので、取消権を失います(21条)。具体例としては、未成年者が親権者から同意を得たことを示す書類を親権者に無断で作成し、相手方に提示した場合などがあります。

法定追認

取り消すことができる法律行為でも、追認をすることができる時以降に、以下のような事実があった場合には、追認しない旨の異議をとどめない限り、法律上当然に追認した者とみなされます(125条)。これを法定追認といいます。

民法125条 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について、次に掲げる事実があったときは、追認したものとみなす。ただし、異議をとどめたときは、この限りでない。

1号 全部または一部の履行
2号 履行の請求
3号 更改
4号 担保の供与
5号 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡
6号 強制執行

これらの行為をした場合には、一般的に、法律行為を追認する意思があると考えられるため、このような規定がされています。

なお、制限行為能力者自身が上記の行為を行ったとしても、法定追認にはならないので、注意してください。

ここで、上記1〜6号までの事実を覚えるための語呂合わせを紹介しておきます。

125条の赤文字の頭文字をとって・・・

履行を焦った時期りこうをあたじき

※「り」・・・履行(1号)、「こ」・・・更改(3号)、「せ」・・・請求(2号)、「た」・・・担保(4号)、「じ」・・・譲渡(5号)、「き」・・・強制執行(6号)

・・・と覚えます。

順番がバラバラなのではじめは厳しいかもしれませんが、勉強が進むと、頭文字さえ出てくれば後は芋づる式に思い出せるはずです。

取消権の消滅時効

制限行為能力者が行った行為をいつまでも取り消すことができるとすると、相手方は、その法律行為がいつ取り消されるかわからないという不安定な立場におかれます。

そこで、民法は、制限行為能力者が取消権を行使することができる期間を規定しています(民法126条)。

民法126条 取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から20年を経過した時も、同様とする。

 

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