売買

売買とは

売買とは、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、これに対して相手方がその代金を支払うことを約することです。

555条 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

相手方に財産権を移転する側を売主、相手方に代金を支払う側を買主といいます。

売買は当事者の合意のみによって成立するので、諾成契約であるが、有償契約・双務契約でもあります。有償契約とは、当時者双方が互いに対価的意味をもつ給付をする契約のことであり、無償契約に対立する用語です。一方、双務契約とは、当事者双方が対価的意味を持つ債務を負担する契約のことであり、片務契約に対立する用語です。

同時履行の抗弁権

双務契約では、当事者に一方は、相手方が債務の履行を提供するまで、自己の債務の履行を拒むことができます(533条)。このような権利を同時履行の抗弁権といいます。

売買では、買主は売主が財産権を移転するまで、代金の支払を拒むことができ、一方、売主は、買主が代金を支払うまで、財産権の移転を拒むことができます。

533条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

他人物売買

売買の目的物は、必ずしも売主の財産権に限られず、他人の財産権であっても売買契約は有効に成立します(560条)。ただし、これはあくまでも債権的に有効なだけであって、物権的には無効です。なので、他人物売買の契約が締結されても、あくまで売主が買主に目的物の所有権を移転する義務を負うにすぎず、目的物の所有権が買主に移転することはありません。

他人物売買において、売主がその売却した財産権を買主に移転することができなかったときは、売主は担保責任を負うことになります(561条)。担保責任については、また詳しく解説します。

560条 他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

561条 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。

契約費用

売買契約の締結に必要な費用は、特約がない限り、売主と買主が等しい割合で負担します(558条)。売買の契約費用の例として、契約書の作成や、目的物の財産価値を評価する費用などがあげられる。

558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

この規定は、売買以外の有償契約に準用されています(559条)。

売主の財産権移転義務

売主は、売買の目的物である財産権を買主に移転する義務を負います。目的物が不動産であれば、目的物の引渡義務に加えて、買主に登記を移転する義務を負います。

目的物を引き渡す前に生じた果実は、売主に帰属する(575条1項)のに対し、買主は、買主が目的物の引渡を受けるまでの代金の利息を支払う必要はありません(同条2項)。

575条1項 まだ引き渡されていない売買の目的物が果実を生じたときは、その果実は、売主に帰属する。
2項 買主は、引渡しの日から、代金の利息を支払う義務を負う。ただし、代金の支払について期限があるときは、その期限が到来するまでは、利息を支払うことを要しない。

買主の代金支払義務

買主は、売主に対して代金を支払う義務を負います。

買主は、売買の目的物について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部または一部を失うおそれがあるときは、売主が相当の担保を供しない限り、 代金の全部または一部の支払を拒むことができます(576条)

576条 売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部または一部を失うおそれがあるときは、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部または一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。

また、売買の目的物が不動産である場合、買い受けた不動産に抵当権や先取特権、質権の登記があるときは、買主は、その消滅請求の手続が終了するまで、代金の支払を拒絶することができる(577条)。

577条1項 買い受けた不動産について抵当権の登記があるときは、買主は、抵当権消滅請求の手続が終わるまで、その代金の支払を拒むことができる。この場合において、売主は、買主に対し、遅滞なく抵当権消滅請求をすべき旨を請求することができる。
2項 前項の規定は、買い受けた不動産について先取特権または質権の登記がある場合について準用する。

予約

予約とは、将来、一定の契約(本契約)を締結しようという合意のことです。

予約には2つのタイプがあり、1つ目は、当事者の一方が本契約を締結することを希望する申込みをすれば、相手方はそれを承諾する義務を負うタイプのものです。2つ目は、将来当事者の一方が一方的な意思表示によって本契約を成立させる権利を行使すれば、自動的に契約が成立するタイプのものです。このように、一方的な意思表示により本契約を成立させる権利のことを予約完結権といいます。

予約完結権の当事者は、その予約完結権の行使によってもたらされる将来の所有権移転請求権を、現在の段階で保全するために仮登記をすることができます。

この規定は、売買以外の賃貸借や請負などの有償契約に準用されています(559条)。

 

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