委任

委任とは

委任とは、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約のことです(643条)。

643条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

委任は、諾成・片務・無償(有償委任の場合は、双務・有償)契約です。

受任者の義務

善管注意義務

受任者は、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負い(644条)、この義務に違反した場合、債務不履行責任を負います。そして、この善管注意義務は、たとえ委任が無償であっても要求される義務です。委任契約は信頼関係を前提とする契約なので、たとえ無償であっても、責任を軽減すべきではないという理由からです。

644条 受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。

自己執行義務

委任契約は、信頼関係を前提とする契約であるから、受任者は、原則として自ら事務を処理しなければならないと解されています。しかし、やむを得ない事情がある場合には、他人に委託できると考えられています(民法104条類推適用)。

民法104条 委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

報告義務

受任者は、委任者から請求があるときは、いつでも委任事務処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を報告しなければなりません(645条)。

645条 受任者は、委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告し、委任が終了した後は、遅滞なくその経過および結果を報告しなければならない。

その他の義務

受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物や、収取した果実を委任者に引き渡さなければなりません(646条1項)。

また、受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければなりません(646条2項)。

646条1項 受任者は、委任事務を処理するに当たって受け取った金銭その他の物を委任者に引き渡さなければならない。その収取した果実についても、同様とする。
2項 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。

さらに、受任者は、委任者に引き渡すべき金額またはその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した以後の利息を支払い、もし委任者に利息を超える損害がある時は、その損害を賠償しなければなりません(647条)。

647条 受任者は、委任者に引き渡すべき金額またはその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

委任者の義務

報酬支払義務

受任者は、特約がない限り、委任者に対して報酬を請求することができません(648条1項)。特約で有償とした場合には、委任者は報酬支払義務を負うが、後払いが原則です(同条2項)。

648条1項 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2項 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。

費用前払義務

委任事務を処理するにあたって費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その費用の前払いをしなければなりません(649条)。

その他の義務

受任者が委任事務を処理するのに必要な費用を支出したときは、委任者は受任者に対してその費用とそれを支出した日以後の利息を支払わなければなりません(立替費用償還義務)。

また、受任者が、委任事務処理に必要な債務を負担した時は、委任者に対して、自己に変わってその弁済をすることを請求できます(650条1項2項)。

さらに、受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、たとえ委任者に過失がなくても、委任者に対してその損害賠償請求をすることができます(同条3項)。

解除

委任契約は、委任者、受任者のいずれからでも、いつでも解除することができます(651条1項)。委任契約は信頼関係を前提とした契約であるから、当事者間において不信感が生じればもはや契約を続行することは難しいので、解除を認める方が妥当だからです。

しかし、相手方にとって不利な時期に解除したときは、やむを得ない事由があるときを除いて、相手方に生じた損害を賠償しなければなりません(同条2項)。

また、契約を解除すると、契約は遡及的に無効となるのが一般的ですが、委任契約を解除した場合には、この遡及効がありません(652条、620条)。委任は継続的契約なので、委任の解除は、将来に向かってのみその効力が生じます。なぜなら、解除前に行った行為の効力は維持しておいた方が妥当だからです。

652条 620条の規定は、委任について準用する。

620条 賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において、当事者の一方に過失があったときは、その者に対する損害賠償の請求を妨げない。

委任契約の終了原因

委任は信頼関係を基礎とする契約であるから、当事者間の信頼関係が失われる原因と考えられている以下の事由によって終了します(653条)

委任者 受任者
死亡
破産手続開始の決定
後見開始の審判 ×

 

委任者が後見開始の審判を受けた場合以外○です。

そして、通常、受任者が後見開始の審判を受ければ、事務処理能力が失われたことを意味するので、委任終了自由となります。一方、委任者は事務を処理してもらう側なので、たとえ後見開始の審判を受けたとしても、委任終了事由とはなりません。

委任終了後の処分

委任が終了した場合において、急迫の事情があるときは、受任者またはその相続人もしくは法定代理人は、委任者またはその相続人もしくは法定代理人が委任事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければなりません(654条)。

 

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