遺留分

遺留分とは

遺留分とは、被相続人の一定の近親者に必ず残さなければならない相続財産の一定割合のことです。この制度は、相続人となる者の遺産に対する期待を保護し、相続人の生活を保障するために規定された制度です。

ちなみに、遺留分を有する相続人のことを遺留分権利者といいます。

遺留分の割合

遺留分の割合は以下のように定められています(1028条)。

  1. 直系尊属だけが相続人の場合 遺産の3分の1
  2. それ以外の場合 遺産の2分の1

※兄弟姉妹には遺留分はありません。

相続人が数人いる場合には、上記の割合を法定相続分にかけることによって、最終的な相続分が算定されることになります。

例えば、相続人が妻Aと子B・Cであれば、それぞれの遺留分は以下の通りになります。

A:2分の1(相続分)×2分の1(遺留分)=4分の1
B:4分の1(=1/2×1/2:相続分)×2分の1(遺留分)=8分の1
C:4分の1(=1/2×1/2:相続分)×2分の1(遺留分)=8分の1

遺留分減殺請求権

遺留分減殺請求権とは

被相続人が遺贈または贈与をしており、残りの遺産で遺留分の満足を受けることができない場合は、相続人は、遺留分を侵害している遺贈や贈与の効力を失わせ、その範囲内で財産の返還を請求することができます(1031条、1041条1項)。この請求権のことを遺留分減殺請求権(いりゅうぶんげんさいせいきゅうけん)といいます。

なお、遺留分を侵害する遺言も有効です。遺留分を侵害された相続人は、遺留分減殺請求権を行使することによって、遺言によって利益を受けた者に対して、財産の返還を請求することができるだけです。

例えば、Aが自己の全財産である甲土地(3,000万円)を愛人Dに贈与して、その6カ月後に死亡した場合、Aの妻Bは750万円(=3,000万円×1/2×1/2)、Aの子Cも750万円(=3,000万円×1/2×1/2)の遺留分を有することになります。

権利の行使期間

遺留分権利者が、相続の開始および減殺(げんさい)すべき遺贈または贈与のあったことを知った時から1年間、または相続開始時から10年を経過すると、遺留分減殺請求権を行使することができません(1042条)。

権利の性質

遺留分減殺請求権は形成権なので、B・Cが遺留分減殺請求権を行使すれば、Dに拒否権はありません。また、遺留分減殺請求権は裁判外で行使することができるので、B・Cはわざわざ裁判を起こすことなく、Dに対する意思表示によって、遺留分減殺請求権を行使できます。

また、遺留分減殺請求権は、自由に譲渡することができ、相続の対象にもなります。ここで、遺留分減殺請求権が債権者代位権の対象になかどうかが問題となりますが、遺留分減殺請求権は行使されることによってはじめて具体的に財産権となるので、行使されるまではあくまで「債務者の一身に専属する権利」(423条1項ただし書)なので、債権者代位権の対象とはなりません。また、遺留分は相続人を保護するための制度です。なので、遺留分減殺請求権を行使するかどうかは、遺留分権利者の意思に委ねるべきことであって、債権者が代わりに行使することは、債務者の財産処分権を不当に害することになります。このことからも、債権者代位権の対象になるとするのは妥当ではありません。

そして、遺留分減殺請求権は、各相続人の遺留分を担保するための権利なので、B・Cはそれぞれ単独で遺留分減殺請求権を行使することができます。

遺留分の放棄

遺留分は、相続開始前であっても放棄することができますが、家庭裁判所の許可が必要です(1043条1項)。

そして、共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の遺留分権利者の遺留分が増加することはありません(同条2項)。

 1043条1項 相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる。
2項 共同相続人の一人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない。

 

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