意思表示
意思表示とは
意思表示とは、当事者が一定の法律効果を生じさせることを意図して行う意思の表示活動のことです。
具体的には、BがAと売買契約を締結するために、BがAに対して「D土地を買いたい」といった場合、Bは意思表示をしたことになります。
そして、法律行為は、この意思表示によって行われます。
法律行為には、主に契約の申込み・申込みの承諾や契約などがあります。
契約の成立
契約は、原則として申込みとそれに対する承諾の2つの意思の合致によって成立します。
申込みとは、特定の内容の契約を成立させることを意図してなされる意思表示のことです。
承諾とは、申込みを応諾して契約を成立させるために申込者に対してする意思表示のことです。
例えば、Bが「D土地を買いたい」と言った(契約の申込み)のに対して、Aが「わかりました。D土地を売りましょう」と言う(申込みの承諾)だけでAB間におけるD土地の売買契約が成立します。
このように、契約は当事者の意思の合致、すなわち合意だけで成立するのが原則です。すなわち、契約の成立には、契約書の作成は必要ありません。
民法176条 物権の設定および移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
このように合意だけで成立する契約のことを諾成契約といいます。諾成契約の主な例としては、売買、贈与、請負、委任が挙げられます。
一方、要物契約というものがあります。要物契約とは、合意の他に物の交付があってはじめて契約が成立する契約のことです。主な例としては、消費貸借、使用貸借、寄託、質権の設定などです。
意思表示の効力発生時期
対面した人の間で意思表示が行われる場合、お互いの意思表示は一瞬に相手方に到達するので、意思表示の効力発生時期を考える必要はあまりありません。
しかし、遠く離れた人同士(隔地者間)で意思表示が行われる場合は、意思表示の効力がいつ発生するのかが問題となってきます。
申込み
隔地者間の意思表示の効力は、原則として、申込者の意思の通知が相手方に到達した時点で生じます(民法97条1項)。これを到達主義といいます。民法では、到達主義が原則です。
そして、この「到達した時点」は、いかなる時を指すのでしょうか。相手方の自宅のポストに入った時をいうのでしょうか、それとも、相手方が意思の通知の内容を認識した時をいうのでしょうか。
この点、当事者の公平をはかるために、「到達した時点」とは相手方の支配領域内に入った時をいうと考えられています。
今回の例であれば、申込者による通知が、相手方の自宅のポストに入った時点で到達したと考えることになります。なぜなら、一般的には、自宅のポストに投函された時点で、相手方は通知された内容を確認しうるから(相手方の支配領域内に入ったといえるから)です。
なぜ、当事者の公平をはかるために、「到達した時点」を相手方の支配領域内に入った時にするのかが、良く分からない人もいるかもしれません。ここでは、そうしなければ申込者に不利になってしまう場合があり得るからと思っておいてください。
また、隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、または行為能力を失ったときであっても、その効力を失いません(97条2項)。
しかし、申込者が反対の意思を表示した場合、または、その相手方が申込者の死亡もしくは行為能力の喪失の事実を知っていた場合には、適用されません(525条)。
承諾期間を定めてした申込みは、その期間中は撤回できません(521条1項)。
ただし、この承諾期間が経過すれば、申込みの効力は失われてしまいます(同条2項)。
また、承諾期間を定めなかった場合であっても、承諾を受けるに相当な期間は、これを撤回できないものとされています(524条)。
承諾
隔地者間の契約は、契約の申込みを受けた者が承諾の通知を発した時に成立します(526条1項)。これを発信主義といい、到達主義の例外です。これは、早い段階で契約を成立させるのが当事者の意思に合致するし、当事者に不公平な結果をもたらすおそれもないからです。
承諾といっても、申込みと同様のないようでなければ、契約は成立しません。例えば、3,000万円でマンションを買うという申込みに対して、5,000万円で売りますよという承諾がなされても契約は成立しません。
しかし、このように内容を変更した承諾や条件を付した承諾は、申込みの拒絶とともに、新たな申込みをしたものとみなされます(528条)。そうした承諾に対して、申込者がさらに承諾をすれば、契約は成立することになります。
意思表示の過程
意思表示は以下のような過程を通じて、相手方に到達します。具体的にイメージしてみましょう。
例えば、あなたがスーパーでピーマンを買う場合を考えてください。ピーマンを買う前に、あなたは4つのプロセスを経ているはずです。
まず、あなたはピーマンが食べたいと思ったからこそ、ピーマンを買おうと考えたわけです。この「ピーマンが食べたい」と思ったことが「動機」です。
次に、ピーマンを食べたいのだから「ピーマンを買おう」と思うはずです。この「ピーマンを買おう」という意思が「内心的効果意思」です。
そして、ピーマンを買うためには、ピーマンを買いたい意思をスーパーに知らせなければなりません。通常は、ピーマンをレジ係の人の前に置くだけです。この「ピーマンをレジ係の人の前に置こう」という意思が「表示意思」です。
最後に、ピーマンをレジ係の人に置く行為が「表示行為」です。
以上の4つのプロセスを経て、あなたは「ピーマンを買いたい」という意思表示(売買契約の申込みの意思表示)をスーパーに対して行っています。
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