自己借地権

自己借地権が認められた経緯

自己所有の土地に区分所有建物(例えば、マンションなど)を建設し自己が所有することになる専有部分以外を分譲する場合、土地所有者は、専有部分の買主に対して土地の一部を売り渡さなければならなってしまいます。なぜなら、専有部分を所有するためには敷地利用権(土地の所有権)が必要だからです。この場合、区分所有建物の敷地である土地は専有部分の各所有者の共有となってしまいます。

しかし、区分所有建物の敷地となっている土地をすべて自己所有にしたいと考える土地所有者もいるのが現実です。その場合、敷地利用権を所有権ではなく借地権にすれば、土地の所有者は、区分所有建物の専有部分を売り渡した後でも、引き続き、敷地となっている土地すべての所有者のままでいることができます。

しかし、これでは、借地権設定者である土地の所有者が他の専有部分の所有者と共に、その借地権を共有することになってしまいます。

民法上、所有権以外の権利が同一人に帰属すると、それらの権利は原則として消滅することになるので、借地権設定者が自らその土地の借地権者になることができないと考えられています。

ここで考えられたのが、自己借地権です。

自己借地権とは、借地権設定者が自らの土地に自らを借地権者として設定する借地権のことです。

借地借家法では、借地権を設定するにあたって、他の者とともに有することとなる場合に限り、土地所有者(借地権設定者)が借地権者となることができます(借地借家法15条1項)。

15条1項 借地権を設定する場合においては、他の者と共に有することとなるときに限り、借地権設定者が自らその借地権を有することを妨げない。
2項 借地権が借地権設定者に帰した場合であっても、他の者と共にその借地権を有するときは、その借地権は、消滅しない。

どういう時に意味があるのでしょうか

以下、具体例をあげて説明していきます。

土地所有者であるAが、マンションを建設し、1つの専有部分だけAが購入し、後の専有部分をBとCに売却した場合を考えてみます。専有部分を売却すれば、敷地利用権も同時に移転することになります。

図にするとこんな感じになります。

茶色の四角がマンション一棟、それぞれ区切られている部分が専有部分、緑色部分が敷地、それぞれ区切られている部分が敷地利用権と考えてください。

自己借地権

敷地利用権を所有権にした場合

敷地利用権が所有権である場合は、上記のような形で、土地の所有権を専有部分の所有者であるA・B・Cで共有する形となります。

しかし、元々土地のすべてを所有していたAが、この土地をすべて自己所有にしたまま、1階と2階の専有部分をそれぞれB・Cに売り渡したいと考えた場合は、敷地利用権を借地権にする方法があります。

自己借地権 - 土地すべてを自己所有に

敷地利用権を借地権にした場合

敷地利用権を借地権にしたら、Aが借地権設定者として借地権を設定し、その借地権をA・B・Cが借地権者として共有することになるだけなので、Aは引き続き土地の所有者でいることができます。

敷地利用権を借地権にした場合

 

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