条件と期限
条件と期限とは
売買や贈与といった法律行為をする場合に、「ある事実が発生すれば、その行為の効力が発生する(または消滅する)」といったように、将来の一定の事実の成否によって法律行為の効力を発生させたり、消滅させる旨の意思表示をすることがあります。そうした意思表示には、条件および期限というものがあります。
条件とは、その事実が将来確実に発生するか否かが明らかでないものをいい、期限とは、その事実が将来発生することが確実であるものをいう。
条件
条件の種類
条件には、停止条件と解除条件があります。
停止条件とは、ある事実が生じることにより、法律行為の効力が発生するという条件のことです(127条1項)。
例えば、大学に合格したら車をあげるという契約は、大学に合格したという事実が生じることにより、車を贈与するという法律行為の効力が発生する停止条件が付された贈与契約です。これを、停止条件付き贈与契約といいます。
127条1項 停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。
解除条件とは、ある事実が生じることにより法律行為の効力が消滅するという条件のことです(同条2項)。
例えば、大学を卒業したら仕送りをやめるという契約は、大学を卒業したという事実が生じることにより、お金を贈与するという法律行為の効力が消滅する解除条件が付された贈与契約です。これを、解除条件付き贈与契約といいます。
127条2項 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。
不法な条件を付した場合
不法な条件とは、不法な行為をすること(またはしないこと)条件とした場合のことです。例えば、あの人を殴ったら5,000円あげるという契約は、人を殴るという不法な行為をすることを条件とした贈与契約です。また、5,000万円払ってくれたら、あなたの子供を誘拐しないという契約は、子供を誘拐するという不法な行為をしないことを条件とした贈与契約です。
このような不法な条件が付された契約は無効です(132条)。
132条 不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするのも、同様とする。
条件がついた権利の保護
条件が成就することによって得られる利益は、期待権として保護されています(128条)。
128条 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。
そして、条件の成就によって不利益を受ける者が故意に条件の成就を妨げたときは、条件の成就によって利益を受ける者は、その条件が成就したとみなすことができます(130条)。はじめの大学に合格したら車をあげるという契約で説明すると、車を贈与したくない者が大学の合格を妨げた場合、結果的に不合格になったとしても、車の贈与を受けることができます。
130条 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
また、逆の場合は、条件が成就しないことによって利益を受ける者は、その条件が成就しなかったものとみなすことができます(130条類推適用)。
期限
期限の種類
期限には始期と終期があります。始期は、法律効果を発生させる期限のことであり、終期は、法律効果を消滅させる期限のことです。
また、具体的な日付が決められた期限を確定期限といい、到来することは確実だが、その時期が不確定である期限を不確定期限という。前者の具体例は、3月5日までといったような期限のことであり、後者の具体例は、自分が死んだ時といったような期限のことである。
期限が到来する前の効力
期限が定められることによって当事者が受ける利益を期限の利益といい、これは、通常債務者の利益の為に定めたものと推定されます(136条1項)。
期限の利益は、あくまで権利にすぎないので、放棄することができますが、相手方の利益を害することはできせん(同条2項)。例えば、5日7日までに年利5%の利息付きで返済することを約束してお金を借りた債務者は、弁済期である5月7日までに弁済することもできるが(期限の利益を放棄できるが)、利息を支払ってもらうことを期待している債権者の利益を害することはできないので、債務者は5月7日までの利息を支払わなければなりません。
また、以下の場合には、債務者は期限の利益を失います(137条)。
- 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
- 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、または減少させたとき
- 債務者が担保を提供する義務を怠ったとき
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