制限行為能力者による行為の効力、取り消しと追認の効果
制限行為能力者による法律行為は取り消すことができるといいましたが、そもそも取り消されるまではその行為にどのような効力があるのでしょうか。また、行為が取り消されることによってどのような効果が生じるのでしょうか。
以下、それぞれについて見ていきます。
取り消し
制限行為能力者による行為の効力
制限行為能力者による取消権は、あくまで制限行為能力者を保護するために認められた権利なので、制限行為能力者が法律行為を取り消さない限り、法律行為は有効なままです。
なぜなら、法律行為をそのまま有効にしておいた方が、制限行為能力者にとって利益となる場合があるからです。
取り消しの意義と効果
制限行為能力者が法律行為を取り消してはじめて、その法律行為はさかのぼって無効となります(法121条本文)。
121条(取消しの効果)
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
法律行為が無効となれば、お互いにその法律行為によって受け取ったものを相手方返還しなければなりません。
この場合、制限行為能力者は、現に利益を受けている限度で返還すればよいです(同条ただし書)。
121条(取消しの効果)
ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
例えば、未成年者が親に無断でパソコンを売却し代金として20万円を得て、そのうちの5万円をゲームセンターで消費した場合を考えてください。パソコンの売買契約が取り消された場合、通常であれば未成年者は20万円を買主に返還しなければなりません。しかし、未成年者は現に利益を受けている限度で返還すれば良いので、残りの15万円を買主に返還すれば良いということになります。
なお、未成年者がその5万円を生活費にあてていた場合は、現に利益を受けている限度は20万円になるので、未成年者は20万円を買主に返還しなければなりません。なぜなら、生活費はたとえ未成年者が20万円を得ていなくても通常出ていくお金なので、補填できると考えられるからです。
取消権者
制限行為能力者の法律行為を取り消すことができる者は、制限行為能力者またはその代理人、承継人もしくは同意をすることができる者です(法120条1項)。
なお、制限行為能力者の法律行為の相手方には取消権がありません。なぜなら、取消権は制限行為能力者を保護するための権利だからです。
追認
たとえ制限行為能力者が行った法律行為でも、取り消したくない場合も考えられます。そこで認められたのが追認という制度です。
追認の意義と効果
追認とは、取り消すことができる法律行為を、後で確定的に有効なものとする意思表示のことです。
上述した通りru
、取消権は制限行為能力者を保護する為の権利なので、制限行為能力者にとって利益であれば、追認することができるわけです。
ただし、一度追認すれば、追認した行為に関しては二度と取り消すことはできません(法122条本文)。
追認権者
制限行為能力者は、行為能力を回復しなければ追認することができません(法124条1項2項)。(成年被後見人に関しては、行為能力回復後に行為を了知する必要があります)
了知というのは、「知る」という意味です。
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