根抵当権

根抵当権の意義

根抵当権とは、一定範囲に属する不特定の債権を極度額まで担保する特殊な抵当権であり、抵当権の一種です。

根抵当権を設定する側を根抵当権設定者といい、根抵当権を設定してもらう側を根抵当権者といいます。

根抵当権の被担保債権

根抵当権は、抵当権と異なって、被担保債権を特定せずに、一定の範囲に属する不特定の債権を、あらかじめ当事者間で定めた一定の限度額まで担保する担保物権です。この限度額のことを極度額といいます。例えば、ある企業が仕入先から継続して物を購入する場合、仕入れる度に売買契約を締結していては事務手続が面倒です。そこで、特定の企業間において行われる特定の商品の売買については、元本が確定するまで、1億円まで担保するようにしたい時に設定されるのが、根抵当権です。

元本確定というのは、たとえ極度額が定められていても、期間が無制限だと、設定者側も不安です。そこで、元本確定期日を定めることが認められています。他にも、元本確定事由がありますが、宅建試験では、元本が確定する期日を定めることができる問いう点だけ覚えておけば大丈夫です。

元本確定期日が到来するまでは、様々な債権が成立したり消滅したりを繰り返しますが、元本確定期日が到来すると、その時点で根抵当権の元本が確定することになります。例えば、元本確定期日が2015年の5月10日、極度額が1億円と定められているとします。そして、2015年4月10日時点で債権が7,000万円成立したとしても、その後も債権の成立や消滅を繰り返した結果、5月10日時点で5,000万円の債権しか残っていないこともあり得ます。この場合、極度額が1億円と定められていても、その根抵当権では5,000万円の債権しか担保されないことになります。

被担保債権を特定しないといっても、債権者と債務者との間に生じるすべての債権を担保する包括根抵当権は認められていません。根抵当権の被担保債権として担保されるには、以下4つの条件いずれかに該当する必要があります(398条の2)。

  1. 債務者との間の特定の継続的取引契約によって生ずる債権であること
  2. 債務者との一定の種類の取引によって生ずる債権であること
  3. 特定の原因に基づいて債務者との間で継続的に生ずる債権であること
  4. 手形上または小切手上の請求権であること

根抵当権の内容の変更

根抵当権を設定する際に定める内容は、以下のものがあります。どのような場合に、その内容を変更できるかについてそれぞれ説明していきます。

被担保債権の範囲と債務者

根抵当権と設定者の合意で変更することができます。後順位の抵当権者やその他の第三者の承諾は不要です(398条の4)。

極度額

後順位の抵当権者とその他の利害関係人の承諾を得れば、変更することができます(398条の5)。

元本確定期日

期日の到来前に、根抵当権者と設定者の合意で自由に変更できます(398条の6第1項)。

優先弁済権

根抵当権にも優先弁済権があります。そして、根抵当権の場合、抵当権と異なり、他の債権者の申立てによって競売が開始した場合でも、これに加入して弁済を受けることができます。

そして、優先弁済権を行使できる範囲は、根抵当権が確定した時に存在する元本や利息だけでなく、極度額の範囲内であれば、遅延損害金、確定後から配当の時までに生じる利息すべてに及びます(398条の3第1項)。

398条の3第1項 根抵当権者は、確定した元本ならびに利息その他の定期金および債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる。

 

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