先取特権

先取特権とは

先取特権とは、法律上定められている特定の債権を有する者が、債務者の一定の財産から、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることのできる担保物権です(303条)。

303条 先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

先取特権の種類

先取特権には、債務者のすべての財産を目的とする一般先取特権と、特定の動産を目的とする動産先取特権、特定の不動産を目的とする不動産先取特権の3つがある。

そして、不動産先取特権には以下の3つがあります。

不動産保存の先取特権(325条1号、326条)

不動産の滅失・損傷を防止するために要した費用を担保するための先取特権です。

325条 次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有する。
1号 不動産の保存
2号 不動産の工事
3号 不動産の売買

326条 不動産の保存の先取特権は、不動産の保存のために要した費用または不動産に関する権利の保存、承認もしくは実行のために要した費用に関し、その不動産について存在する。

不動産工事の先取特権(325条2号、327条1項)

不動産の工事費用の債権を有する工事の設計者や施工者などに認めれた先取特権です。

327条1項 不動産の工事の先取特権は、工事の設計、施工または監理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関し、その不動産について存在する。

不動産売買の先取特権(325条3号、328条)

不動産を売却した売主が、その代金を受領する前に売買の目的となった不動産を買主に移転したときは、その代金および利息について、その不動産について成立する先取特権です。

328条 不動産の売買の先取特権は、不動産の代価およびその利息に関し、その不動産について存する。

先取特権の類型

先取特権の性質

先取特権には、付従性・随伴性・不可分性・物上代位性があります。

また、先取特権には優先弁済的効力があるので、先取特権者は目的物を競売することができます。

先取特権の効力

一般の先取特権は、登記がなくても一般債権者に対抗することができます(336条本文)が、不動産先取特権は、登記をしなければ第三者に対抗できません。

336条本文 一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。

また、以下の要件を満たさなければ、当事者間においても先取特権の効力を主張することができません。

不動産保存の先取特権は保存行為完了後、直ちに登記をすることによって(337条)、不動産工事の先取特権は工事を始める前に予算額を登記することによって(338条1項)、不動産売買の先取特権は売買契約と同時に(340条)、それぞれ登記をすることによって効力を保存することができます。

337条 不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに登記をしなければならない。

338条1項 不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならない。この場合において、工事の費用が予算額を超えるときは、先取特権は、その超過額については存在しない。

340条 不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価またはその利息の弁済がされていない旨を登記しなければならない。

なお、登記された不動産保存の先取特権および不動産工事の先取特権は、それより前に登記された抵当権にも優先します(339条)。一方、不動産売買の先取特権と抵当権の優劣は、登記の先後で決まります。両者の取り扱いに違いがあるのは、保存の費用は抵当不動産の価値を維持したのであり、工事費用は抵当不動産の増加についてだけ優先権があるにすぎないのだから、これらを優先させた方が当事者にとっても公平と考えられているからです。

339条 前二条の規定に従って登記をした先取特権は、抵当権に先立って行使することができる。

 

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