敷金
敷金とは
敷金とは、賃貸借契約において、賃借人が負担すべき一切の費用を担保する目的で、賃借人から賃貸人に支払われる金銭です。
アパートの賃貸借契約を締結した方は分かると思いますが、契約時に家賃の1カ月分や2カ月分のお金を支払いますよね(最近は敷金が0カ月分の物件もあったりします)。このお金のことを敷金といいます。この敷金は、あなたが家賃を滞納したり、部屋を使っている際に何かを壊したりした時のために、賃貸人に預けるお金です。賃貸借契約が終わって部屋を明け渡す時に、管理会社の担当者に「フローリングに傷がついているので、修理費用を敷金から差し引きますね。」などと言われた経験のある方は、よりイメージがわきやすいと思います。(傷の程度次第では、賃貸人が負担する場合もありますが。)
賃貸人は、全くの赤の他人に自己の建物や土地を貸すわけですから、多少のリスクが伴います。そこで、建物を乱暴に使用されたり、賃料を支払ってくれなくなった場合に、賃貸人を保護するために、一定の担保を与えることにしたわけです。
なお、よく勘違いされがちなのですが、敷金契約は賃貸借契約とは独立に締結される契約です。
敷金の充当
敷金は、賃借人が支払うべき費用を担保するための金銭ですが、未払い賃料に敷金を充当するかどうかに決定権があるのは、あくまでも賃貸人です。
なので、賃貸人の賃料支払請求に対して、賃借人が「前月の賃料がどうしても支払えそうにないので、その分だけ敷金を充当してください」と要求することはできません。すなわち、敷金充当の抗弁は認められません。なぜなら、敷金は賃貸人を保護するために設けられた制度なので、賃貸人の意志に反して担保を失わせることを許すべきではないからです。
敷金の返還
賃借人が、敷金の返還を請求できるのは、賃貸借の目的物の明渡が完了した時です。賃貸借契約が終了したときではありません。
前述した通り、敷金は、賃貸借契約において、賃借人が負担すべき一切の債務の支払を担保するための制度なので、賃借人が負担すべき最終的な費用を確定してから、敷金返還請求権が発生することになっているのです。
例えば、AからBに建物が賃貸され、BからAに敷金として10万円が支払われた場合、この10万円は、Bの未払い賃料や部屋のクリーニング費用だけでなく、賃貸借契約が終了してから明渡しまでの間に発生する賃料相当額の損害賠償も担保します。こうした損害賠償の額は、Bが建物を明け渡してはじめて確定するものなので、敷金返還請求権が発生するのは、賃借人が目的物を明け渡した時となっているわけです。
賃借人が支払うべき最終的な費用が確定していれば、最悪、賃借人が踏み倒しても、賃貸人はその分を敷金と相殺することができます。これが、敷金という制度の存在意義なのです。
仮に、賃貸借契約終了時に敷金返還請求権が発生するとなると、賃貸人は、賃借人が支払うべき最終的な費用を確定することができないまま賃借人に敷金を返還しなければならなくなり、賃貸人を保護する敷金制度の存在意義がなくなってしまいます。
同時履行の抗弁権
敷金返還請求権と賃貸借の目的物の明渡請求権は同時履行の関係に立ちません。
上述した通り、賃貸借の目的物の明渡しが先履行となるので、賃借人は、敷金が返還されていないことを理由に、目的物の明渡しを拒むことはできません。仮に、賃借人同時履行の抗弁権が認められるとすれば、賃借人は、数万〜数十万円(敷金は、大体それくらいの額です)の敷金を支払ってもらうために、数百万、場合によっては数千万の価値のある建物の明渡を拒むことができることになり、賃貸人にとって不公平です。
このようなことから、賃借人に同時履行の抗弁権は認められていません。
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