その他の債権消滅原因
債権の消滅原因としては、弁済と相殺以外にも以下のようなものがあります。
時効(167条以下)
債権は消滅時効にかかるので、時効によっても消滅します。
167条1項 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
代物弁済(482条)
代物弁済とは、債務の内容として指定されている給付の代わりに、他の給付をすることによって、債権を消滅させる行為です。例えば、100万円の金銭債務を負っている債務者が、100万円の代わりに100万円相当の壷を債権者に給付することで弁済をするといったようなことです。
482条 債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。
ただ、代物弁済の対象となるものには様々なものが考えられるので、その評価は債権者によって様々です。前述した例だと、壷だと後で換金するのに負担がかかってしまうので、その負担を考慮しても100万円の壷で満足する債権者もいれば、あくまで100万円を給付してほしいという債権者もいるかもしれません。そこで、代物弁済をするに当たっては、債権者の承諾を得る必要があります。
供託(494条)
供託とは、弁済者が、債権者のために、弁済の目的物を国家の一機関に寄託することによって、債務を免れる行為のことです。
494条 債権者が弁済の受領を拒み、またはこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。
更改(513条)
更改とは、債権の要素である債権者・債務者・債権の目的物いずれかを変更することによって、古い債権を消滅させ、同時に新たな債権を成立させる契約のことです。例えば、500万円の支払債権の目的物は500万円の金銭ですが、この目的物を500万円相当の壷に変更させることによって、500万円の金銭債権を消滅させると同時に500万円相当の壷を引き渡してもらう債権を成立させるのです。一見、代物弁済と似ているかもしれませんが、代物弁済では現実に代わりの給付が行われるのに対して、更改では内容を変えた新たな債権が成立するにとどまるという点で、両者は異なります。
513条1項 当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する。
免除(519条)
免除とは、債権者が、債務者のために、何の見返りもなく債権を消滅させる行為のことです。免除は、債務者の承諾を得ることなく単独で行うことができます。
519条 債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は、消滅する。
混同(520条)
混同とは、債権と債務が同一人に帰属することで、両者を存続させておく必要がなくなり、債権・債務がともに消滅することをいいます。例えば、500万円の債権者Aが債務者Bの父であり、後にAが死亡し、Bが唯一の相続人としてAの地位を相続した場合、Bは自己の債権者ともなり、自分に対して請求して自分に対して払うという状態になるので、債権と債務を存続させておく必要がなくなります。そこで、こういった場合は、債権と債務は消滅することになります。
520条 債権および債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
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