相続の承認・放棄
相続の承認・放棄
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所において、相続の承認または放棄をする旨の申述をしなければなりません(915条1項本文)。申述というのは、申し述べるという意味です。
915条1項本文 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、相続について、単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない。
一旦なされた相続の承認・放棄の意思表示は、たとえ上記の3カ月以内であっても、原則として撤回することができません(919条1項)。
相続開始に対して、以下の3つの意思表示の方法があります。
単純承認
単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を無限に承継することを承認することです。例えば、被相続人の財産が1億円で債務が5,000万円である場合に単純承認をすれば、財産1億円と債務5,000万円をすべて承継することになります。
そして、以下の場合には、この単純承認をしたものとみなされます(921条)。
- 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。ただし、保存行為および民法602条に定める期間を超えない賃貸をした場合は、単純承認をしたものとみなされません。
- 相続人が、相続開始から3カ月以内に、限定承認も相続放棄もしなかったとき
- 相続人が、限定承認または相続の放棄をした後で、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、ひそかにこれを消費し、または悪意でこれを相続財産目録に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、単純承認をしたものとみなされません。
覚え方としては、1は、何もしてない間の話だから、処分など結構思い切った行為だけがあげられています。ただし、保存行為や短期の賃貸は小さいことだから除外。一方、3は、限定承認または相続の放棄をした後の話だから、こっそりやっていることばかりですね。隠匿したり(隠したり)、「ひそかに」消費したり、相続財産目録に記載しなかったり(これも隠してるのと同じ)と。2は根性で!・・・ちょっと無理があるかもしれませんが、こんな感じで覚えてください。
限定承認
限定承認とは、相続によって承継された財産の範囲内で被相続人の債務や遺贈を弁済し、その残りがあれば、その財産を承継すること承認することです。
限定承認をするためには、相続開始から3カ月以内に相続財産目録を作成して、これを家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければなりません。ちなみに、この相続財産目録を作成するのは大変なので、限定承認はあまり行われていないのが実情です。
相続関係が複雑にならないようにするために、この限定承認は共同相続人全員が共同して行わなければなりません(923条)。
923条 相続人が数人あるときは、限定承認は、共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができる。
相続の放棄
相続の放棄とは、相続を拒否する旨の意思表示です。
相続の放棄をしようとする者は、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(938条)。この相続放棄は、被相続人が生きている間に行うことはできません。たとえ、被相続人の生前に相続放棄をする旨の意思表示をしていたとしても、法律上何の効力も生じません。
相続放棄をした者は、その相続に関しては、はじめから相続人でなかったものとみなされます(939条)。しかし、相続関係者の利益を保護するため、相続放棄をした者は、他の共同相続人または次順位の相続人が相続財産を管理することができるようになるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を管理する義務を負います(940条1項)。
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