借地権・借家権の譲渡・転貸

借地権

建物所有を目的とした土地の賃借権の場合

借地権者が土地の賃借権を他人に譲渡・転貸する場合には、借地権設定者の承諾を得ることが必要です。これは単に売買などによる譲受人だけでなく、競売によって建物を得た買受人も、借地権設定者の承諾が必要です。

ちなみに、借地権の転貸を受けた者のことを転借地権者といいます。

借地権設定者が承諾しない場合は、建物の譲受人は、以下2つの手段をとることができます(借地借家法14条、19条)。

借地権設定者に対して、建物買取請求権を行使する

建物の譲受人は、建物の代金を支払っている以上、借地権設定者に対して、建物を時価で買い取るよう請求することができます。これを建物買取請求権といいます。建物の譲渡を受けたのに、借地権の譲渡・転貸が承諾されなければ、建物を持っていても意味がないので、このような規定がされたわけです。

建物の譲受人が建物買取請求権を行使した場合、譲受人が借地権設定者に請求できる金額は、あくまで建物の時価だけです。借地権の価値分の価格までを請求することはできません。

また、譲受人の建物の引渡義務と借地権者の建物価額の支払義務は同時履行の関係にあるので、譲受人は建物価額の支払を受けるまで、土地の引渡を拒むことができます。ただし、その場合、譲受人は、建物価額の支払を受けるまでに土地を使用したわけだから、地代相当額を返還しなければなりません。

例えば、借地権者Bが土地上の自己所有の建物をCに譲渡したが、借地権設定者Aが借地権の譲渡・転貸を承諾しない場合、CはAに対して土地上の建物を買い取るように請求することができます。

借地権の譲渡・転貸

ここで注意して頂きたいのは、建物は借地権者の所有物なので、建物の譲渡自体に借地権者の承諾は不要です。建物を使用するためには、土地を使用せざるを得ないので、建物を譲渡した結果、それに伴って借地権も譲渡・転貸されることになり、この借地権の譲渡・転貸について借地権設定者の承諾が必要なのです。

また、借地権者が土地上の建物を他人に賃貸する場合も、借地権設定者の承諾は不要です。この場合は、借地権者が自己所有の建物を賃貸するだけであって、土地を転貸しているわけではないからです。

裁判所に申し立てて、借地権設定者の承諾に代わる許可を得る
譲受人が、売買などにより建物を譲り受けた場合

裁判所への申立ては、建物の譲渡人(すなわち借地権者)が行います。この場合、借地権者が自己の意思で建物を譲渡しているからです。

買受人が、競売により建物を取得した場合

裁判所への申立ては、建物の買受人が行います。この場合、借地権者が自己の意思により建物を譲渡したのではなく、抵当権者の実行により買受人が建物を取得しただけだからです。

ここまでのポイントを表にまとめておきます。

売買 競売
建物買取請求権を行使する者 譲受人 買受人
裁判所の承諾に代わる許可を申し立てる者 譲渡人 買受人

建物所有を目的とした地上権の場合

建物所有を目的とする地上権の場合は、借地権設定者の承諾を得る必要はありません。地上権は、自らその土地を使用・収益できるほか、他人に地上権を譲渡したり、土地を賃貸することできる物権だからです。

これを機会に、地上権のところを復習しておきましょう。より理解が深まると思います。

 借家権

借家権の譲渡・転貸については、基本的には民法と同様に考えれば大丈夫です。借地権の譲渡・転貸のところを復習しておきましょう。

借家権の場合は、賃借人による譲渡・転貸をについて、賃貸人の承諾を得られない場合であっても、裁判所に申し立てて、承諾に代わる許可をもらうことができません。

 

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