担保物権とは
担保物権とは
担保物権とは、ある債権の弁済を確保するために、他人のものの担保価値を利用する権利のことです。
そして、弁済が確保される債権のことを被担保債権といいます。
担保物権の種類
担保物権には、約定担保物権と法定担保物権があります。約定担保物権は当事者の合意により成立するのに対し、法定担保物権は法律上当然に成立します。
先取特権と留置権が法定担保物権で、抵当権(や根抵当権)、質権が約定担保物権です。
担保物権の性質
担保物権は、以下4つの性質があります。
付従性
担保物権は被担保債権が成立してはじめて成立し、被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅します。これが付従性です。
随伴性
担保物権は特定の債権を担保するためのものであるから、被担保債権が譲渡されれば、原則として担保物権も譲受人に移転します。これが随伴性です。
不可分性
担保物権を持つ者は、被担保債権すべての弁済を受けるまで、目的物のすべてについてその権利を行使することができます(296条、350条、372条)。これが不可分性です。
物上代位性
担保物権は、目的物が滅失しても、それによって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使することができます。このような権利を物上代位権といいます。目的物が売却・賃貸された場合や、目的物が損傷した場合も同様です。
例えば、抵当権が設定された債務者の建物が火事により滅失した場合でも、抵当権者は債務者が支払を受ける保険金に対して抵当権を行使することができます。
担保物権者が物上代位権を行使するためには、債務者が受けるべき金銭その他の物が債務者に支払われる前に差し押さえなければなりません。なぜなら、債務者に支払われた後だと、債務者が有する一般財産と見分けがつかなくなっても物上代位権を行使できることになり、事実上、債務者の一般財産から優先弁済を受けるのと同じ結果となり、他の債権者を害することになってしまうからです。
以上、担保物権の性質を説明してきましたが、抵当権、質権、先取特権、留置権がそれぞれ有する性質は異なります。それぞれの担保物権が有する性質については○、有しない性質については×と記載しています。
付従性 | 随伴性 | 不可分性 | 物上代位性 | ||
---|---|---|---|---|---|
約定担保物権 | 抵当権 | ○ | ○ | ○ | ○ |
質権 | ○ | ○ | ○ | ○ | |
法定担保物権 | 先取特権 | ○ | ○ | ○ | ○ |
留置権 | ○ | ○ | ○ | × |
×は1カ所だけなので覚えやすいですね。
留置権だけが物上代位権を有していません。なぜなら、留置権は目的物を留置するという作用のみを持つことに特徴がある一方、留置権以外の担保物権は、目的物の交換価値を把握するためのものだからです。
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