手付金

手付金とは

手付金とは、契約を締結する際に、当事者の一方から相手方に対して交付される金銭その他の有価物をいいます。そして、手付金を交付する契約を手付契約といいます。多くの場合、交付されるのは金銭であることが多く、買主が手付金を交付します。

手付契約の成立

手付契約は、契約締結の際に手付金を交付することによってなされる要物契約で、売買契約とは独立した契約です。ただ、手付契約によって交付された金銭その他有価物は、最終的には代金の一部にあてられることが多いです。

手付金の種類

手付金には以下3つの種類があります。授受される手付がどの手付に当たるかについては、当事者の意思によって決まります。当事者の意思が明確でない場合は、授受された手付は解約手付と推定されます(557条1項)。

557条1項 買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。

  1. 証約手付・・・契約が締結されたことを示し、その証拠という意味で交付される手付のことです。
  2. 解約手付・・・手付の額もしくは手付の倍額だけの損失は生じるが、相手方に債務不履行がなくても、相手方が履行に着手するまでは契約を解除することができる(557条1項)、すなわち解除権留保の趣旨で交付される手付のことです。
  3. 違約手付・・・債務不履行があった場合に、その損害賠償の額を予定する目的で交付される手付のことです。手付金を支払った当事者が債務不履行になったときは、手付金を受領した者がこれを没収でき、一方、手付金を受領した当事者が債務不履行になったときは、手付金を支払った者は、その返還とそれと同額の損害賠償を請求できます。

解約手付の効力

解約手付を交付した者は手付を放棄し、解約手付を受領した者は、手付を交付した者に手付の倍額を提供すれば、契約を解除することができます。

解約手付に基づく契約解除は、当事者の一方が履行に着手するまではすることができます。これは、せっかく契約の履行に着手したのに、手付の放棄または手付の倍額の提供によって解除されたのでは困るということから、既に契約の履行に着手した者を保護するために規定されたものです。とすれば、まだ相手方が履行に着手していなければ、たとえ自分が履行に着手していても、自分から解除権を行使することができます。

履行の着手とは、買主が売主に中間金や残金を支払ったり、他人物売買において、売主が他人の不動産を取得して登記を得るなど履行行為に取りかかる行為をいいます。代金を支払うために融資を受ける行為は履行の着手ではなく、履行の準備にすぎません。

手付の倍額返還による解除の場合、その倍額の金銭を現実に提供した上での解除の意思表示をすることが必要であって、口頭の提供だけで解除の意思表示をするのでは足りません。現実の提供とは、相手方が受け取ろうと思えばすぐに受け取ることのできる状態にするのに対して、口頭の提供とは、口で申し出るだけです。

債務不履行に基づく解除と異なり、解約手付による解除では、別途損害賠償請求をすることはできません(557条2項)。

解債務不履行を理由として契約を解除するときは、たとえ解約手付が交付されていても、その手付金の返還を請求することができます。

手付金の規定(557条)は、売買以外の有償契約に準用されています(559条)。

 

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