地役権
地役権の意義
地役権とは、その設定契約で定められた目的のために、他人の土地を利用する権利のことです。例えば、Aの土地が道路に面していないので、隣人であるBの土地を通行させてもらうために設定されたりします。
地役権として利用される側の土地を承役地といい、利用させてもらうことによって利益を受ける側の土地を要役地といいます。
どちらがどちらの土地か分からなくなることがあるので、私は「土地を利用することを承諾する方の土地が承役地」という感じで覚えていました。
承役地と要役地は必ずしも隣接している必要はなく、例えば、日照権を確保するために、高い建物を建てないようにしてもらう場合も、日照という便益を受けるために他の土地を利用させてもらうことなので、地役権の一種です。
地役権の性質
付従性
地役権は、要役地の便益のために設定される権利なので、要役地から分離して譲渡したり、要役地とは別のものとして他の権利の目的とすることはできません(281条2項)。
随伴性
また、要役地の所有権が移転したとき、または他の権利の目的とされたときは、設定行為に別段の定めがない限り、地役権も移転し、または要役地について存する他の権利の目的となります(同条1項)。
不可分性
地役権は、要役地の利益のために承役地を利用する権利であるから、要役地や承役地が共有であるときに、そのうちの共有持分だけに地役権が発生したり、消滅することは通常は考えにくいです。
そこで、要役地や承役地の共有者の一人が、その持分について要役地のために存する地役権を消滅させることはできません(282条1項)。
地役権が取得できる場合
地役権は、地上権設定契約で取得されるのが通常です。地役権設定契約がされた場合、地役権を設定してもらう側(つまり、要役地の所有者など)を地役権者といい、地役権を設定する側(つまり、承役地の所有者など)を地役権設定者といいます。
地役権設定契約の他にも、譲渡や相続・遺言、時効によって地役権が取得されることもあります。なお、時効により取得できる地役権は、継続的に行使され、かつ、外形上認識できるものに限られる(283条)。
第三者の対抗要件
地役権の取得は、登記をしなければ第三者に対抗することができません(177条)。
承役地が譲渡された場合は、地役権者は登記がなければ、承役地の譲受人に地役権を対抗することはできません。一方、要役地が譲渡された場合は、要役地の所有権移転登記がされれば、地役権の移転も登記なくして対抗することができます。
地役権の存続期間
地役権については、存続期間は要素ではありません。
地役権の効力
土地使用権
地役権者は、設定契約により定められた内容にしたがって、権利を行使することができます。
譲渡
地役権者は、地主の承諾がなくても、地役権を自由に譲渡することができます。
地代支払義務
地役権において地代は要素ではないので、地役権者が地代を支払うかどうかは特約で決まります。ただ、たとえ地代を支払うことを特約として定めても、その旨を登記する方法がない(不動産登記法80条参照)ので、それを第三者に対抗することはできません。
地役権の消滅原因
地役権は、地役権者によって20年間行使されなければ、時効によって消滅します(167条2項)。
また、承役地が第三者によって原始取得された場合も、地役権は消滅します。原始取得とは、ある権利を、前主の存在を前提としないで、独立して取得することです。時効取得がその代表例です。それに対して、承継取得は、前主の存在を前提として、前主の権利を承継して取得することです。売買や贈与などがその代表例です。
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