賃借人を保護するための規定

土地・建物の明渡し猶予

借地上の建物の賃借人が、借地権の存続期間の満了を知らなかった場合には、最大で1年間まで、土地・建物の明渡しを裁判所から猶予してもらえます(借地借家法35条)。建物の賃借人が、借地権の存続期間について知らないことは十分にあり得るので、そうした建物の賃借人を保護するために規定されました。

35条1項 借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において、借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは、建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその一年間までに知らなかった場合に限り、裁判所は、建物の賃借人の請求により、建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。
2項 前項の規定により裁判所が期限の許与をしたときは、建物の賃貸借は、その期限が到来することによって終了する。

居住用建物の賃貸借の承継

居住用建物の賃借人が、事実上の夫婦または養親子と同様の関係にある者と同居中に死亡し、その賃借人に相続人がいない場合には、その同居人は賃借権を承継することができます(36条1項本文)。

ただし、賃借権を承継するということは賃料支払義務を承継することにもなるので、同居人が、賃借人が相続人なしに死亡したことを知ってから1カ月以内に賃貸人に反対の意思を表示した場合には、同居人はその賃借権を承継しません(同条1項ただし書)。

36条1項 居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻または縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

例えば、建物に賃借人Bとその愛人Cが同居していた場合、Bが死亡し、かつ、相続人がいない場合には、CはBの賃借権を承継することができます。なので、賃貸人Aは、Bが死亡した後でも、賃貸借が終了したことを理由に、Cに対して建物の明渡を請求することができません。

ただ、Cが賃借権を承継すると、賃料支払義務を負うことになります。そこで、Cがその賃料を支払ってまでその賃借権を承継したくないと思った場合は、その賃借権を承継したくない旨の意思表示をすれば、Cはその賃借権を承継しません。

特約で排除できる

この規定は、賃貸人と賃借人の特約によって排除することができます。なぜなら、この規定は、あくまで賃借人が死亡した場合にその同居人を保護するための規定であって、賃借人を保護する規定ではないからです。

 

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