特殊な不法行為

特殊の不法行為とは

特殊の不法行為とは、一般不法行為とは異なる特殊な要件によって成立する不法行為のことです。

使用者責任(715条)

使用者責任とは、事業の執行において、被用者が第三者に損害を加えた場合、その事業の遂行のために他人を使用する者、または使用者の代わりに事業を監督する者が負う責任のことです(715条)。

被用者を使用する者を使用者といいます。

715条1項 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2項 使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
3項 前二項の規定は、使用者または監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。

成立要件

使用者責任が成立する要件は、以下の4つです。

  1. ある事業の遂行のために他人を使用していること
  2. 被用者が事業の執行につき行った行為であること
  3. 第三者への加害行為であること
  4. 被用者自身に一般不法行為の要件が備わっていること

使用者が免責される場合

使用者が被用者の選任およびその事業の監督について相当の注意をしたこと、または相当の注意をしても損害が発生するような事情があったことを、使用者側が証明した場合は、使用者責任を免れます(715条1項ただし書)。

効果

使用者と使用者の代わりに被用者を選任・監督する者が損害賠償責任を負います。

一方、被用者は、独自に一般不法行為責任を負います。使用者または使用者の代わりに被用者を選任・監督する者が被害者に損害賠償したときは、被用者に対して求償することができます(715条3項)。

注文者の責任(716条)

請負人の行為について注文者は原則として損害賠償責任を負いません(716条本文)。ただし、注文者が請負人に対して行った注文または指図に過失があったために他人に損害を与えた場合は、注文者も損害賠償責任を負います(同条ただし書)。

716条 注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文または指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。

土地工作物責任(717条)

土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって、他人に損害を生じさせたときは、その工作物の占有者は、被害者に対して損害賠償責任を負います(717条1項本文)。ただし、占有者が損害の発生を防止するために必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません(同条ただし書)。

成立要件

  1. 土地の工作物の設置または保存に瑕疵があったこと
  2. 他人に損害が生じたこと
  3. 1と2の間に因果関係があること

効果

一次的には占有者が責任を負いますが、占有者が、自己が損害の発生を防止するために必要な注意をしていたことを証明すれば、損害賠償責任を免れます。

占有者が、自己が損害の発生を防止するために必要な注意をしていたことを証明したときは、所有者がその損害を賠償しなければなりません。所有者は、たとえ自分に過失がなかったとしてもこの責任を免れることはできません(無過失責任)。

損害を賠償した占有者または所有者は、損害の原因について責任のある者に対して求償することができます(717条3項)。

 

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