登記手続

共同申請主義

原則

権利に関する登記の申請は、原則として、登記権利者と登記義務者が共同で行われなければなりません(不動産登記法60条)。

登記権利者とは、登記によって利益を受ける者のことで、売買を原因とする所有権移転登記であれば買主、抵当権設定登記であれば抵当権者などがこれにあたります。

そして、登記権利者は、登記がされることによって登記名義人となります。

登記義務者とは、登記によって不利益を受ける者のことで、売買を原因とする所有権移転登記であれば売主、抵当権設定登記であれば抵当権設定者などがこれにあたります。

なぜ、共同で申請する必要があるのかというと、実体関係に合致しない虚偽の登記がされることを防止するために、登記権利者と登記義務者両者を登記手続に関わらせることにしたわけです。

表示に関する登記の場合は、表示に関する登記のところで詳しく解説します。

例外

以下の場合は、例外的に職権で登記することができます。

  1. 誤って受理された管轄違いの権利登記の抹消
  2. 登記官の過誤でされた、錯誤または遺漏のある権利登記の更正

更正というのは、訂正のことだと考えてください。

以下の場合は、例外的に単独で申請することができます。

  1. 判決による登記(63条1項)
  2. 相続登記(63条2項)
  3. 合併による登記(63条2項)
  4. 登記名義人の表示の変更登記(64条1項)
  5. 所有権保存登記(74条)
  6. 仮登記のうち、一定の要件を満たすもの(107条)

登記申請義務

表示に関する登記

表示に関する登記のうち表題登記というものがありますが、これは、不動産について表題部に最初にされる登記です(2条20号)。この申請がされると、表題部が作成されます。

表示に関する登記は、原則として登記官が職権ですることができます(28条)が、以下の場合は、所有者に申請義務が課されています。

土地
  1. 新たに生じた土地または表題登記がない土地の所有権を取得した場合(36条)
  2. 地目または地積に変更があった場合(37条
  3. 土地が滅失した場合(42条)
建物
  1. 建物を新築した場合(47条)
  2. 建物が滅失したとき(57条)

などがあります。

なお、建物を新築した場合および建物が滅失した場合は、所有者は1カ月以内に表示登記を申請しなければなりません。

権利に関する登記

権利に関する登記については、当事者に申請義務はありません。ただし、登記義務者については、登記権利者に対して登記申請に協力する義務を負っています。なので、登記権利者が登記をしたくなければ、登記権利者・登記義務者はそのまま登記をしなくてもよいのですが、登記権利者が登記をしたいと主張している場合は、登記義務者はそれに協力しなければなりません。

登記の申請先

登記申請を行う場合は、原則として、その不動産の所在地を管轄する登記所に申請しなければなりません。

しかし、建物が二つの登記所の管轄区域にまたがって新築される場合があり得ます。

この場合は、またがっている二つの登記所のいずれか一方に申請すれば良いことになっています。

登記申請の方法

登記は、不動産物件変動を公示するための重要な手続なので、口頭によって登記申請を行うことは認められません。登記申請は、次のいずれかの方法によって行うことになります。

電子情報処理組織による送信

電子情報処理組織とは、簡単にいうとメールのことです。問題文では、電子情報処理組織と表記されるので、メールのことだと分かるようにしておいてください。

書面または磁気ディスクの提出

提出は、登記所に出頭して、登記の申請に必要な書面を提出する方法です。これは郵送によって行うことも可能です。

登記識別情報

登記識別情報とは、登記が完了すると、登記官から登記名義人となる登記申請人に通知される英数字等でできている情報のことです。

登記識別情報は、登記名義人が登記を申請する際に必要となる情報です。例えば、所有権移転登記を受け、登記識別情報の通知を受けたBが、その後、その土地をCに売却した場合、BからCへの所有権移転登記の申請をする際に、Bに通知された登記識別情報が必要となります。(BからCへの所有権移転登記を申請する時点で、その土地の登記名義人となっているのはBなので、Bが登記識別情報を提出する必要があります。)

このように、登記識別情報とは、登記申請においてパスワードのような機能を果たすものなので、通知を受けた人は、基本的に自分以外の人に知られないように注意しなければなりません。

登記識別情報が提出できない場合

登記申請人も人間なので、登記識別情報を忘れることもあります。また、登記識別情報を盗まれることをおそれて、あえて登記識別情報の通知を拒否することもできます。

これらの場合は、登記申請に際して登記識別情報を提出できません。そこで、以下のように本人確認が行われます。

登記官から登記義務者に対して事前通知を行い、登記義務者がそれに対して回答します。事前通知とは、登記官が登記義務者に対して、「こういう登記申請があったが、間違いありませんか?」と確認する手続のことです。また、所有権の登記においては、登記義務者が住所変更をしている場合は、前の住所にも通知しなければなりません。

登記識別情報を示すことができない場合であっても、以下の場合は事前通知は不要です。ただし、前住所への通知は必要です。

  1. 司法書士や弁護士が登記申請を代理した場合であって、かつ、登記名義人が本人に間違いないと言っている場合
  2. 公証人が、登記名義人が本人であることを認証した場合

しかし、仮に登記申請の際に登記識別情報が提出されたとしても、登記官が「この登記識別情報は盗まれたものかもしれない」と疑うに足りる相当な理由があった場合は、登記官は申請人に出頭を求めたり質問をしたりして、本人確認のための調査をしなければなりません。

代理

登記申請についても、民法の原則の通り、代理人によってすることが認められています。典型的な例としては、司法書士が代理して行う場合です。

なお、登記申請は「債務の履行」(民法108条ただし書)にあたるので、登記申請の代理人は、登記権利者・登記義務者の双方の代理人になることができます。

代理権の不消滅

登記の申請についての代理権は、以下の事由によっては消滅しません(17条)。

  1. 本人の死亡
  2. 本人である法人の合併による消滅
  3. 本人である受託者の信託の任務終了
  4. 法定代理人の死亡またはその代理権の消滅・変更

このように、 不動産登記法では、民法とは異なる規定がされています。不動産登記法は民法の特別法なので、この場合は不動産登記法が優先して適用されます。

 

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