請負
請負とは
請負とは、当事者の一方が相手方にある仕事を完成させることを約し、これに対して注文者が完成した仕事の報酬を支払うことを約する契約のことです(632条)。
632条 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
請負は、諾成・双務・有償契約です。
請負人の義務
仕事完成義務
請負人は、仕事を完成する義務を負います(632条)。仕事の完成に期限があれば、その時期までに完成しなければなりません。
目的物引渡義務
建物の建築といった物の制作についての請負においては、請負人は完成した目的物を引き渡す義務を負います。
担保責任
注文者は、仕事の目的物に瑕疵がある場合には、請負人に対して瑕疵の修補請求をすることができますが、その修補に代えて、または修補とともに損害賠償請求をすることができます(634条)。たとえ瑕疵の修補が可能であっても、瑕疵の修補に代えて直ちに損害賠償請求をすることができます。
634条1項 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2項 注文者は、瑕疵の修補に代えて、またはその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、533条(同時履行の抗弁)の規定を準用する。
注文者は、完成した目的物にその瑕疵があるために、契約の目的を達成することができないときは、契約の解除をすることができます(635条本文)。ただし、建物その他土地の工作物については、たとえ重大な瑕疵があっても契約を解除することはできません(635条ただし書)。契約を解除すれば建物を取り壊すことになり、せっかく建てた建物を取り壊すのはもったいないという社会経済上の理由から、このような規定がされています。そして、瑕疵が重大で建て替えるしかない場合、立替えに要する費用相当額の損害賠償も認められると解されています。
635条 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
請負人の担保責任は、目的物の瑕疵が注文者の供給した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたときには発生しません(636条本文)。ただし、請負人がその材料の性質や注文者の指図が不適当であることを知りながら告げなかった場合には、責任を免れることはできません(636条ただし書)。
636条 前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質または注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
存続期間
注文者は、瑕疵修補請求または損害賠償請求および契約の解除を、目的物の引渡を受けたときから1年以内にしなければなりません(637条1項)。仕事の目的物の引渡が不要の場合は、仕事が終了した時から1年以内です(同条2項)。
637条1項 前三条の規定による瑕疵の修補または損害賠償の請求および契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から1年以内にしなければならない。
2項 仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。
建物のような土地の工作物については、土地の工作物の請負人は、その工作物または地盤の瑕疵については引渡しの後5年間、その瑕疵担保責任を負います(638条1項本文)。さらに、石造、土造、煉瓦造、コンクリート造、金属造その他これらに類する構造工作物については10年です(638条1項ただし書)。
638条1項 建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物または地盤の瑕疵について、引越しの後5年間その担保の責任を負う。ただし、この期間は、石造、土造、れんが造、コンクリート造、金蔵造、その他これらに類する構造の工作物については、10年とする。
特約
担保責任の全部または一部を負わない旨の特約は原則として有効だが、請負人が知りながら注文者に告げなかった事実については、担保責任を免れることができません(640条)。
640条 請負人は、634条または635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
目的物の所有権の帰属
完成した目的物の所有権の帰属やその移転時期は、基本的には材料の供給者によって決まるというのが判例の考え方です。
以下の2パターンがあります。
材料の全部または主要な部分を注文者が供給した場合は、完成した目的物の所有権は、特約がない限り、はじめから注文者に帰属すると解されています。
材料の全部または主要な部分を請負人が供給した場合は、特約がない限り、完成した目的物の所有権は請負人に帰属し、引渡しによって注文者に移転すると考えられています。ただし、建物の完成前に請負代金が支払われた場合には、建物の完成と同時に注文者に所有権が帰属すると解されています。
注文者の義務
報酬支払義務
注文者は、請負人に対して報酬を支払う義務を負います(632条)。報酬は、特約のない限り、仕事の目的物の引渡しと引き換えに(物の引渡を要しない時は、仕事の終了と同時に)支払います。
目的物受領義務
目的物の引渡が必要な請負では、注文者には目的物を受領する義務があると考えられています。
解除
注文者の解除権
請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して、契約を解除することができます(641条)。注文者が不要になったにもかかわらず、契約を最後まで続行するのは、社会経済上の損失が大きいからです。
641条 請負人が仕事をしない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。
請負人からの自由な解除は認められていません。請負人が解除できるのは、注文者に債務不履行があった場合と、注文者が破産手続開始の決定を受けた場合(以下で解説しています)です。
注文者の破産による解除
注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人または破産管財人は契約を解除することができます(642条1項)。この場合、請負人は既にした仕事の報酬および費用について、破産財団の配当に加入することができます。
642条1項 注文者が破産手続開始の決定を受けたときは、請負人または破産管財人は、契約の解除をすることができる。この場合において、請負人は、既にした仕事の報酬およびその中に含まれていない費用について、破産財団の配当に加入することができる。
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