売主の担保責任

売主の担保責任とは

売主の担保責任とは、売買契約において、売買の目的となる物や権利に瑕疵や不足などがあった場合、売主が買主に対して負う責任のことです。この責任は、有償契約における売主と買主の公平のために規定されたものであるから、たとえ売主に過失がなくても、売主は担保責任を負わなければならない(無過失責任)。

担保責任には、以下6つのタイプがあります。

権利の全部が他人に属している場合

他人の財産権が売買の目的とされた場合、売主はその財産権を取得して買主に移転する義務を負いますが、売主がこの義務を履行できなかった場合、売主は担保責任を負います。

買主は他人の財産権についての売買であることについて善意であっても悪意であっても、契約を解除することができます(561条前段)。また、善意であれば、損害賠償請求をすることもできます(561条後段反対解釈)。

561条 前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。

権利の一部が他人に属している場合

売買の目的となる財産権の一部が他人に属している場合、売主はその財産権の一部を取得して買主に移転する義務を負いますが、売主がこの義務を履行できなかった場合、売主は担保責任を負います。

買主は、善意であっても悪意であっても、その不足部分の割合に応じて代金の減額請求をすることができます(563条1項)。もし、買主が善意であれば、損害賠償請求をすることもできます同条3項)。さらに、買主が善意である場合、売主がその権利の一部を移転できないのであれば、そもそも買っていなかったという事情があれば、買主は損害賠償請求及び契約の解除をすることができます(同条2項)。

563条1項 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
2項 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
3項 代金減額の請求または契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。

これらの権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ1年以内に行使しなければなりません(564条)。

数量が不足している場合

数量指示売買において、数量が不足している場合、売主は担保責任を負います。

数量指示売買とは、

当事者において売買の対象となる物が実際に持つ数量を確保するために、その一定の面積(容積、重量、員数、尺度なども)があるということが契約に表示され、かつ、この数量を基礎にして代金額が定められた売買

であるとされている(最高裁判決昭和43年8月20日)。

簡単にいうと、数量を基礎として代金が定められている売買のことです。例えば、200㎡の土地の売買において、1㎡当たり15万円として、代金が3,000万円と定められる売買は、数量指示売買です。

この場合に、目的物である土地が190㎡しかなかった場合、善意の買主に限って、代金減額請求と損害賠償請求が認められる。さらに、買主がこの数量不足をあらかじめ知っていたら、そもそも買っていなかったという事情があれば、買主は契約の解除をすることもできます(565条、563条)。

これらの権利は、買主が数量不足を知ってから1年以内に行使しなければなりません(565条、564条)。

565条 前二条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合または物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足または滅失を知らなかったときについて準用する。

他の権利による利用の制限がある場合

売買の目的物である不動産に、他人の地上権、永小作権、地役権、留置権、不動産質権または登記した賃借権が存在するために、買主が目的物の利用を妨げられるときには、善意の買主に限り損害賠償の請求ができ、もしそのために売買の目的を達成できない場合は、契約を解除することができます(566条1項2項)。

また、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合も同様です(同条2項)。

これらの権利は、買主がその事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません(同条3項)。

566条1項 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権または質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2項 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合およびその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3項 前二項の場合において、契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。

抵当権または先取特権が実行された場合

売買の目的物である不動産に抵当権や先取特権が存在しているだけでは、買主は目的物権の利用を妨げられないから、売主に担保責任を追及することはできませんが、これらの担保権が実行されることによって買主が所有権を失った場合には、契約の解除と損害賠償の請求をすることができる(567条1項3項)。また、買主が費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対してその費用の償還を請求することができます(567条2項)。

567条1項 売買の目的である不動産について存した先取特権または抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
2項 買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
3項 前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。

抵当権等があっても被担保債権の弁済がされれば抵当権等が消滅する可能性があり、買主が抵当権等の実行により所有権を失うとは限らないので、たとえ買主が抵当権等の存在を知っていたとしても、買主は売主に担保責任を追及することができます。

目的物である物に瑕疵があった場合

売買の目的物であるに隠れた瑕疵がある場合、売主は瑕疵担保責任を負わなければなりません。瑕疵とは、その物が通常有すべき品質、性能を欠いている状態をいいます。「隠れた」とは、通常人の注意をもって知り得ないという意味です。

売買の目的物に瑕疵があった場合、善意無過失の買主に限り、損害賠償請求をすることができ、瑕疵のために契約の目的を達することができない場合は、契約を解除できます。なぜ無過失まで要求されるのかというと、ある程度の注意をすれば知り得た場合には、そもそも隠れた瑕疵に当たらなくなるからです。

これらの権利は、買主が瑕疵を発見した時から1年以内に行使しなければなりません(570条、566条)。

570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

566条1項 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権または質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2項 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合およびその不動産について登記をした賃借権があった場合について準用する。
3項 前二項の場合において、契約の解除または損害賠償の請求は、買主が事実を知ったときから1年以内にしなければならない。

さらに、競売の買受人は権利の瑕疵に対する担保責任の規定により、債務者に対して解除または減額請求をすることができます(568条1項、566条)が、物の瑕疵に対する担保責任を追及することはできません(570条ただし書)。競売では通常の相場より安い価格で購入できることが多いので、物の瑕疵に関しては我慢すべきと考えられているからです。

568条1項 強制競売における買受人は、561条から前条までの規定により、債務者に対し、契約の解除をし、または代金の減額を請求することができる。

担保責任に関する特約

担保責任についての規定は、任意規定であるから、売主は担保責任を一切負わないとしたり、民法上規定された責任を変更することができます。任意規定とは、当事者の合意で修正できる規定のことです(これに対して、たとえ当事者が合意しても修正できない強行規定があります)。ただし、売主が瑕疵があることを知りながら買主に告げなかった場合、または売主が権利を自ら第三者に設定・譲渡した場合は、特約により担保責任を免れることはできません(572条)。

572条 売主は、560条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実および自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

以下担保責任について表にまとめました。

買主 損害賠償 解除 代金減額 行使期間
全部他人
560〜562条
善意 ×
悪意 × ×
担保権による制限
567条
善意 ×
悪意 ×
用益権による制限
566条
善意 × 知った時から1年
悪意 × × ×
瑕疵担保
570条
善意 × 知った時から1年
悪意 × × ×
一部他人
563〜564条
善意 知った時から1年
悪意 × × 契約から1年
数量不足
565条、563〜564条
善意 知った時から1年
悪意 × × ×

 

 

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