遺言

遺言とは

遺言とは、遺言者の死亡とともに、自己の遺産の処分方法を指定しておく単独行為で、法律に定められた要式に従って行われる法律行為です。

遺言をするために必要な能力

遺言は、本人の最終意思を尊重するための制度なので、遺言者が制限行為能力者の場合に法定代理人が代わりに遺言をすることを認めたり、遺言の効力が生じた後に法定代理人が取り消すことができるとするのは妥当ではありません。そこで、遺言には制限行為能力に関する規定の一部が適用されていません(民法962条)。

民法962条 第5条、第9条、第13条および第17条の規定は、遺言については、適用しない。

なので、未成年者は15歳に達すれば単独で遺言をすることができます(961条)。

被保佐人・被補助人も保佐人・補助人の同意を得なくても遺言をすることができます。

成年被後見人も、事理弁識能力を一時回復した時は、医師二人以上の立ち会いのもとに単独で遺言をすることができます(973条1項)。

973条1項 成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した場合において遺言をするには、医師二人以上の立会いがなければならない。

また、胎児は相続・遺贈について権利能力を有するので、胎児に遺産を与える旨の遺言も有効です。

遺言の方式

遺産相続においては、多くの場合、共同相続人の間では熱烈な争いが生じることが多いです。

そうした争いを可能な限り防止するために、遺言をするに当たっては一定の方式に従って行わなければなりません(967条以下)。その方式は、普通方式として3種類、特別方式として4種類定められており、通常用いられる普通方式には、自筆証書遺言(968条)公正証書遺言(969条)秘密証書遺言(970条)があります。

自筆証書遺言は、被相続人自身でなされる遺言のことです。具体的には、生前、被相続人が遺言を用紙に手書きした場合です。

公正証書遺言とは、以下の方式に従ってなされた遺言のことです。

969条 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

  1. 証人二人以上の立会いがあること

  2. 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること

  3. 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させること

  4. 遺言者および証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これを署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。

  5. 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと

自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認を受ける必要がありますが、公正証書遺言は検認を受ける必要はありません。

検認とは、遺言書の偽造を防ぐために、遺言者の死後、家庭裁判所が遺言書の存在を確認する手続のことなので、検認を受けなくとも遺言の効力は生じます。

秘密証書遺言とは、以下の方式に従ってなされた遺言のことです。

970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

  1. 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。

  2. 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること

  3. 遺言者が、公証人一人および証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述すること

  4. 公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名し、印を押すこと

なお、以下の者が証人になることは認められません(974条)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人、受遺者、これらの配偶者および直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

遺言は、必ず一人の遺言者が一つの証書で行わなければなりません(975条)。例えば、夫婦が一つの証書にそれぞれの遺言を書いても無効となります。これは、非常に紛らわしい方法なので、後々遺言の訂正や撤回をめぐって問題が発生する可能性があることから禁止されています。

975条 遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。

遺言の撤回

前述した通り、遺言は本人の最終意思を尊重するための制度なので、遺言をした後であっても、いつでも遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回することができます(1022条)。この撤回権は放棄することができません。

遺言者が前にした遺言と抵触する遺言や法律行為をした場合には、その抵触する部分については、後の遺言や法律行為で前の遺言を撤回したものとみなされます(1023条1項2項)。

また、遺言者が故意に遺言者を破棄したり、故意に遺言の目的物を破棄した場合には、遺言を撤回したものとみなされます(1024条)。

自筆証書遺言と公正証書遺言は効力の点で優劣はないので、公正証書遺言によってされた遺言を、自筆証書遺言でされた遺言によって撤回することができます。

遺言の効力発生時期

受遺者が死亡した場合

遺贈とは、遺言者が、遺言をすることによって、自己の財産の全部または一部を無償で相続人または他人に与えることです。

遺贈は、遺贈者が死亡する前に受遺者が死亡した場合には、その効力を生じません(994条1項)。遺言が条件付であり、条件が成就する前に受遺者が死亡した場合も、遺言は無効となります。

遺言の効力

遺言は、遺言者が死亡した時からその効力を生じます(985条1項)。遺言が停止条件付の場合は、被相続人の死後、条件が成就したときから遺言の効力が生じます。

遺贈の効力が生じない場合や、遺贈の放棄によって効力が生じなくなった場合は、受遺者が受けるべきであったものは、相続人に帰属します(995条本文)。ただし、遺言者がその遺言で別段の意思表示をした場合は、それに従います(995条ただし書)。

 

サブコンテンツ

遺言 | 宅建士攻略法