被補助人
被補助人ってどういう人?
被補助人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が不十分な者であって、家庭裁判所による補助開始の審判を受けた者をいいます(民法15条)。
事理弁識能力とは、自分の行為によりどのような結果が生じるかを認識することができる能力のことです。
また、「常況」という言葉が出てきますが、これは一時的な状態を意味する「状況」とは異なり、普段の状態を意味する言葉です。
ここでのポイントは、被補助人が、事理を弁識する能力が不十分であるということです。「不十分」ということは事理弁識能力はあるが、単にそれが不十分というだけです。
とすると、被補助人には、成年被後見人や被保佐人程ではないが、若干の精神上の障害をかかえている者が想定されているといえます。被補助人ができることは、成年被後見人や被保佐人よりも多いということになります。
こうした補助人の性質から、本人以外の申立てにより補助開始の審判をする場合には、本人の同意が必要とされています(15条2項)。ある程度正常な判断をすることが期待できる補助人だからこそ、このような規定がされていると考えられます。
被補助人を保護する人
被補助人を守る人は、補助人です。補助人は、家庭裁判所による補助開始の審判の際に選任されます(16条)。
補助人は複数人でも選任できます(876条の8第2項、859条の2)。また、法人を選任することも可能です。
被補助人ができること
補助人の同意を得る場合
被補助人が、民法13条で定められた行為(被保佐人ができることを参照)のうち、家庭裁判所が補助人の同意を要すると定めた法律行為を行う場合には、補助人の同意が必要です(17条1項)。
補助人の同意を得ない場合
まず、13条1項に規定されていない行為や、13条1項に該当する行為であっても家庭裁判所が補助人の同意を要すると定められていない行為については、補助人の同意がなくても行うことができます。
13条1項に該当する行為であって、かつ、家庭裁判所が補助人の同意を要すると定めた行為について、被補助人の利益が害されるおそれがないにもかかわらず、補助人が同意をしない場合があります。
この場合は、補助人の同意がないからといって被補助人の行為を制限すれば、かえって被補助人に不利益となります。
そこで、この場合、被補助人は補助人の同意に変わる許可をするよう家庭裁判所に求めることができます(17条3項)。
このように、被補助人が、補助人の同意を得る必要のある行為であって、補助人の同意または同意に代わる許可を得ないで行った行為は取り消すことができます(17条4項)。
ここで一問だけ過去問を解いてみましょう。○か×かで答えてください。
被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。(平成22年度第一問・肢4)
解けましたか?
それでは、解説していきます。
被補助人は、成年被後見人や、未成年者、被保佐人よりも能力が高いので、13条1項に規定されていない事項や、13条1項に該当する行為であっても家庭裁判所が補助人の同意を要すると定められていない行為については、補助人の同意がなくても行うことができるんでしたね。
とすれば、「常に」補助人の同意が必要なわけではありません。
よって、本問の記述は×となります。
取消権者
「制限行為能力者による行為の効力、取り消しと追認の効果」の取消権者を参照してください。
補助開始の審判の申し立てができる者
本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人または検察官です(15条)。
補助人に代理権を付与する審判
被補助人が補助人の同意を要する行為を行う場合には、原則として補助人の同意を得て行いますが、あらかじめ補助人に代理権を付与しておけば、補助人が被補助人を代理して被補助人の法律行為をすることができます。
そこで、家庭裁判所は、被補助人、補助人または補助監督人の請求によって、被保佐人の代わりに法律行為を行うための代理権を付与する審判をすることができます(876条の9)。
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