被保佐人

被保佐人ってどういう人?

被保佐人とは、精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分な者であって、家庭裁判所による保佐開始の審判を受けた者をいいます(民法11条)。

11条(保佐開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。

7条(後見開始の審判)

精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。

事理弁識能力とは、自分の行為によりどのような結果が生じるかを認識することができる能力のことです。

また、「常況」という言葉が出てきますが、これは一時的な状態を意味する「状況」とは異なり、普段の状態を意味する言葉です。

ここでのポイントは、成年被後見人が、事理を弁識する能力が著しく不十分であるということです。「著しく不十分」ということは事理弁識能力はあるが、それがかなり不十分ということです。

被保佐人には、成年被後見人程ではないが、ある程度重い精神病をかかえている者が想定されているといえます。被保佐人ができることは、成年被後見人よりは多いですが、被補助人に比べて限られています。

被保佐人を保護する人

このように被保佐人は、事理弁識能力が著しく不十分なので、成年被後見人を守る人が必要です。

被保佐人を守る人のことを、保佐人といいます。

保佐人は、家庭裁判所による保佐開始の審判の際に選任されます(法12条)。保佐人は複数人でも選任できます(法876条の3第2項、859条の2)。また、法人を選任することも可能です。

被保佐人ができること

 保佐人の同意を得る場合

前述した通り、被保佐人は成年被後見人よりも能力が高いので、民法に規定された重要な行為を行う場合に限り、保佐人の同意が必要です。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独で行うことができます(法13条1項ただし書)。

民法に規定された重要な行為は、民法13条に挙げられた行為のことです。被保佐人がどの行為を行う場合に、保佐人の同意が必要なのかについては出題される可能性があるので、できるだけ覚えておいた方が良いです。

13条1項 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

1号 元本を領収し、又は利用すること。
2号 借財又は保証をすること。
3号 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4号 訴訟行為をすること。
5号 贈与、和解又は仲裁合意をすること。
6号 相続の承継もしくは放棄または遺産の分割をすること。
7号 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、または負担付遺贈を承認すること。
8号 新築、改築、増築または大修繕をすること。
9号 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

602条 処分につき行為能力の制限を受けた者または処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。

1号 樹木の栽植または伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
2号 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
3号 建物の賃貸借 3年
4号 動産の賃貸借 6カ月

ここで、覚え方を紹介します。保佐人の同意を要する重要な行為は、被保佐人が少しでも損をする可能性がある行為であると考えてください。

ここで、一つ考えてみましょう。

なぜ、1号で「元本を領収」することが規定されているのでしょうか。

確かに、元本を領収することは貸したお金が返ってくるので被保佐人の利益になることのように思えます。

しかし、被保佐人が元本を領収すれば、それ以後の利息が発生しなくなるので、保佐人はその分だけ損をしてしまいます。

よって、「元本を領収」することが1号に規定されているわけです。

保佐人の同意を得ない場合

まず、13条1項に規定された行為以外の行為は、保佐人の同意がなくても行うことができます。

民法13条1項に該当する行為であっても、被保佐人の利益が害されるおそれがないにもかかわらず、保佐人が同意をしない場合があります。

この場合は、保佐人の同意がないからといって被保佐人の行為を制限すれば、かえって被保佐人に不利益となります。

そこで、この場合、被保佐人は、保佐人の同意に変わる許可をするよう家庭裁判所に求めることができます(法13条3項)。

このように、被保佐人が、保佐人の同意を得る必要のある行為であって、保佐人の同意または同意に変わる許可を得ないで行った行為は取り消すことができます(13条4項)。

取消権者

「制限行為能力者による行為の効力、取り消しと追認の効果」の取消権者を参照してください。

保佐開始の審判の申し立てができる者

本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人または検察官です(法11条)。

 保佐人に代理権を付与する審判

被保佐人が13条1項に掲げられた行為を行う場合には、原則として保佐人の同意を得て行いますが、あらかじめ保佐人に代理権を付与しておけば、保佐人が被保佐人を代理して被保佐人の法律行為をすることができます。

そこで、家庭裁判所は、被保佐人、保佐人または保佐監督人の請求によって、被保佐人の代わりに法律行為を行うための代理権を付与する審判をすることができます(法876条の4)。

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