未成年者

未成年者とは

未成年者とは、年齢が20歳未満の人のことです。

原則

未成年者には行為能力がないので、単独で法律行為を行うことができません。未成年者が法律行為を行うためには、法定代理人に同意してもらうか、代わりに法律行為をしてもらう(代理)しかありません。

ちなみに、法定代理人というのは、多くの場合は親権者(父親や母親のことです)のことですが、親権者がいなかったり親権者が未成年者を管理する能力をもっていないときは未成年後見人であることもあります。

未成年者が、法定代理人に同意を得ず、または、代理してもらうこともなく法律行為を行えば、その法律行為を取り消すことができます(民法5条)。

未成年者でも、一度結婚すれば、その後20歳になるまでに離婚したとしても行為能力を有します。

18歳以上の男性と16歳以上の女性は、結婚することができます(法731条)。

731条(婚姻適齢)

男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。

※婚姻というのは、結婚のことをいいます。

民法は、結婚するような未成年者は正常な判断能力をもっていると考えるので、結婚した未成年者は、成年者と同様の行為能力が認められています(法753条)。

753条(婚姻による成年擬制)

未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

なお、未成年者が一度結婚すれば、その後20歳になるまでに離婚したとしても行為能力を有します。

未成年を保護する人

未成年者は行為能力がないので、未成年者を守る人が必要です。未成年を守る人は、親権者または未成年後見人といった人たちです。

通常は親権者であることが多いですが、親権者がいない場合や、いたとしても親権者が子供を管理することができない場合には、未成年後見人が未成年を守ることになります(法838条1号)。

未成年後見人は複数人でも選任できます(857条の2)。また、法人を選任することも可能です。

これらの親権者や未成年後見人は、未成年者が法律行為を行うことについて同意をしたり(法5条1項本文)、未成年者の代わりに法律行為を行います。

5条(未成年者の法律行為)

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。

また、もし未成年者が勝手に法律行為を行った場合には、親権者や未成年後見人がその法律行為を取り消すこともできます(法120条1項)。

120条(取消権者)

1項 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者またはその代理人、承継人もしくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

取消権者

「制限行為能力者による行為の効力、取り消しと追認の効果」の取消権者のところを参照してください。

例外

未成年者が単独で法律行為を行っても、取り消すに値しない場合があります。

また、未成年者でも、成年者よりも判断力が優れている人もいるので、そのような未成年者による法律行為まで取り消してしまうと、著しく行動を制限してしまうことにもなりかねません。

そこで、3つの例外が定められています。

民法では、原則と例外がたくさん出てくるので、これらをきっちりと分けて理解することが大切です。このサイトでも、可能な限り原則と例外が一目で分かるように分けて表示しています。

話を元に戻しましょう。以下3つの場合は、未成年者でも単独で法律行為を行うことができます。

単に権利を得、または義務を免れる法律行為(法5条1項ただし書)

例えば、何の負担もなく不動産を贈与してもらったり、借金を免除してもらうことは、未成年者にとって有利です。この場合は、制限行為能力者制度で未成年者を保護する必要はないので、未成年者も単独で法律行為をすることができます。

5条(未成年者の法律行為)

1項 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、または義務を免れる法律行為については、この限りでない。

ここで、過去問を一つ解いてみましょう。○か×かで答えてください。

土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、婚姻していない未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。(平成22年度第一問・肢1)

解けましたか?

それでは、解説していきます。

土地は放っておくと雑草が生えてきて荒れてしまいます。また、土地を所有していると固定資産税という税金を支払わなければなりません。

土地を所有していると、草むしりや税金の支払などの管理義務を負うことになります。

確かに、土地を売却すれば、このような管理義務を免れることになるので、一見すると土地を売却する行為は「単に義務を免れる法律行為」(法5条1項ただし書)に該当するようにも思えます。

しかし、売買契約は「契約」なので、売主と買主はそれぞれ権利を得るのと同時に、義務を負うことになります。

そして、土地を売却すると、売主は土地を引き渡す義務を負うことになるので、本文の売買契約が「単に義務を免れる法律行為」とはいえません。(ちなみに、買主は代金を支払う義務を負うことになります)

よって、本問の記述は×です。

555条(売買)

売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

法定代理人が処分を許した財産の処分行為(法5条3項)

法定代理人が、未成年者に、目的を定めて処分を許した場合とそうでない場合がありますが、いずれの場合も、未成年者は処分を許された財産を単独で処分することができます。

目的を定めて処分を許された場合の具体例として、大学の学費が挙げられます。

大学の学費は、親が子供に預けて学校に払わせている家庭もあるかもしれません。その場合、子供が親から学費として預かった50万円を大学に支払っても、取り消すことはできません。この50万円は、親である法定代理人が処分を許した財産にあたるからです。

目的を定めないで処分を許された場合の具体例として、おこずかいがあげられます。

例えば、ある中学生が親から月1,000円のおこずかいをもらっていれば、その1,000円の範囲であれば何を買っても、親はその売買契約を取り消すことはできません。

5条(未成年者の法律行為)

3項 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。

営業許可をされた場合の営業上の行為(法6条1項)

先ほど、未成年者といっても成年者より判断能力がある人もいると書きましたが、最近では未成年にして起業する人もいます。能力やチャンスに恵まれた未成年者の行為を制限することは、社会的な損失となります。

そこで、民法は、営業許可を受けた未成年者には、許可を受けた営業の範囲内の法律行為だけを単独で行うことを認めました。

例えば、親が、未成年者の子供が八百屋を作って営業することを許可すれば、その未成年者は八百屋の営業の範囲内である法律行為について行為能力を持つことになります。すなわち、野菜を仕入先から購入するという売買契約は、親の同意または代理がなくとも、単独で行うことができます。

しかし、お肉を仕入先から購入する売買契約を単独で締結することはできません。なぜなら、お肉を仕入れることは八百屋の営業の範囲内とはいえないからです。

6条(未成年者の営業の許可)

1項 一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

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