成年被後見人
成年被後見人ってどういう人?
成年被後見人とは、重いの精神病をかかえているのが原因で事理を弁識する能力(=事理弁識能力)を欠く状況ある者であって、家庭裁判所による後見開始の審判を受けた者のことです(民法7条)。
7条(後見開始の審判)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
事理弁識能力とは、自分の行為によりどのような結果が生じるかを認識することができる能力のことです。
また、「常況」という言葉が出てきますが、これは一時的な状態を意味する「状況」とは異なり、普段の状態を意味する言葉です。
ここでのポイントは、成年被後見人が、事理を弁識する能力を欠く者であるということです。「欠く」ということは事理弁識能力が全くないということです。
例えば、事理弁識能力を持っている人は、車道の真ん中を歩くと車にひかれるおそれがあって危ないということを認識できますが、事理弁識能力を欠いている人は、自分が車道のど真ん中を歩いていても車にひかれるおそれがあって危ないということを認識することができません。
とすると、成年被後見人には、重いの精神病をかかえている人が想定されているといえます。成年被後見人ができることは被保佐人や被補助人よりも限られています。
成年被後見人を保護する人
このように成年被後見人は、事理弁識能力を欠いているので、成年被後見人を守る人が必要です。
成年被後見人を守る人のことを、成年後見人といいます。成年被後見人と呼び名との違いは、「被」があるかないかの違いです。「被」というのは、何かをしてもらう立場を表わしています。
問題文を急いで読んでいると、成年被後見人を成年後見人と読み間違える可能性があるので、問題文を読む際には十分注意してください。
成年後見人は、家庭裁判所による後見開始の審判の際に選任されます(法8条)。
成年後見人は複数人でも選任できます(法859条の2)。また、法人を選任することも可能です。
成年被後見人ができること
先ほど述べた通り、成年被後見人は事理弁識能力を欠くので、その分成年被後見人の法律行為については大きく制限されています。
以下、具体的にみていきます。
まず、成年被後見人は、たとえ成年後見人の同意を得ても、単独で確定的に有効な法律行為を行うことができません。
なぜなら、成年被後見人は重い精神病をかかえている人が想定されているので、そのような者がたとえ成年後見人の同意を得ても、適切に法律行為を行うことは難しいと考えられているからです。
なので、成年被後見人の財産上の行為は、原則として成年後見人が代理して行います(法859条1項)。
859条(財産の管理および代表)
1項 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。
とすると、成年被後見人が、成年後見人に無断で財産上の行為を行った場合は、成年被後見人の法律行為を取り消すことができます(法9条本文)。成年被後見人が成年後見人の同意を得て財産上の行為を行った場合も同様です。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為は単独で行うことができます(同条ただし書)。
ここで、過去問を一問解いてみましょう。○か×かで答えてください。
成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。(平成15年第一問・肢3)
解けましたか?
それでは解説していきます。
成年被後見人は、重度の精神病により事理を弁識する能力を欠いているので、たとえ成年後見人の同意を得ていても、適切に法律行為を行うことが難しいです。
なので、成年被後見人は、成年後見人の同意を得て法律行為を行ったとしても、成年後見人は成年被後見人の意思表示を取り消すことができます。
よって、本問の記述は○です。
取消権者
「制限行為能力者による行為の効力、取り消しと追認の効果」の取消権者を参照してください。
後見開始の審判の申し立てができる者
本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人または検察官です(7条)。
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